[雑感]肩書が正義ともかぎらない金融の世界

雑談

当ブログでも繰り返し取り上げていますが、金融関係の記事には、読み手に誤った情報を伝えたり、別の意図が隠されたりと消費者にとって注意が必要な分野といえます。

推奨の変遷

外部リンク:Finasee FP横山光昭さんが提案する、新NISAは「”オルカン”積立」だけじゃない! 気になる注目の銘柄は?

こちらの記事、NISAのつみたて枠で、定番中の定番であるeMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー)eMAXIS Slim  米国株式(S&P500)楽天・S&P500インデックスファンドを勧められています。

これは、ごく一般的な内容で異論はないのです。しかし、この方、少し前の別の記事では、「新NISAでつみたて投資を大成功させる「インデックスファンド」黄金比率」と称して、理解に苦しむ提案をされていました。

投資は自己責任と言われてしまえばそのとおりですが、多くの方が目にする機会が多い著名FPさんであれば、発信内容は一貫性を持たせてほしいところです。

唐突の米国ETF

成長投資枠について、基本つみたて枠で十分と述べられていて、これは好感がもてます。

50代以上ですでに預貯金が結構あるという人は、老後に向けてスピード感をもって貯金から投資へ移行してもよいでしょうし、今すぐ使わないお金がまとまってあるなら成長投資枠を活用するのも一つでしょう。その場合は、せっかくなら積立ではなく一括購入が良いと思いますし、一括購入に向いている商品がETFということになります。

成長投資枠で一括購入もありとのご主張も違和感はありません。しかしここから雲行きが怪しくなります。疑問点が2点あります。

まず、ETFを紹介している点です。ETF利用の理由として、「マーケットが下がったときに一括購入できる点」をあげられています。しかし、一括購入なら、つみたて投資枠で紹介している投資信託と同一のもので十分という結論になります。即座に約定できることは、ETFの利点ですが、投資信託でも数日の差ゆえ、あえてETFを登場させる理由としては乏しいという印象です。

そして、最大の疑問点は、突然の米国ETFの登場です。VTとVTIが紹介されていますが、いずれも、国内の投資信託で投資可能です(楽天全米株式インデックス、SBI・Vシリーズなど)。さらに、国内のETFでも投資可能です(2559など)。この状況下で悩んでいる人向けに、あえて米国ETFをすすめる理由が見いだせません。

おまけに、ベンチマークが異なるファンドを紹介していますが全く理由に触れられていません。そもそも、VT(全世界)はベンチマークこそ違え、eMAXIS Slim 全世界株式、VTI(全米)は、eMAXIS SlimS&P500と値動きは、ほぼ同一です。ますますおすすめ理由がわかりません。

比較可能期間で分配金再投資結果をPortfolioVisualizerにてブログ主作成
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記事の目的

この記事は、「どの商品を選べば良いのだろう?」と悩む人向けに「投資信託に精通したかたたちにおすすめ銘柄を聞く」という趣旨の記事です。

このような紹介の仕方では、かえって悩みが深まるのではないでしょうか。

成長投資枠であえて米国ETFを紹介したのは、
・専門家としてこの分野に精通していることをアピールするため
・米国ETFを持ち出すことで「成長投資」枠を醸し出したかった
・悩んでいる人の悩みをさらに深めて、FPへの相談に誘導する
・何も考えておらず、その場の雰囲気
などなどではないかと邪推してしまいそうですが・・・・・・、いずれにしても、読み手の側に立っているとは感じられません。ちゃんとした理由があるが、字数の都合で書ききれなかったことを祈るばかりです。

唯一の救いは、登場している商品は、いずれも、超低コストの実績のある優良インデックスファンドであることです。この点はとても共感できます。

書籍で基本を抑えるべき

Xやブログ、ネット記事は玉石混交であり、どうしても断片的であったりその時時の市況に影響されていたりと注意が必要です。さらに、金融業界では、販売社をはじめとする提供側と、我々購入側の利害が対立する場面が多く、消費者の側に立っていない記事も含まれてしまいます。

もし悩むのであれば、やはり信頼できる書籍で基本的な事項を押さえておくのが急がば回れだとブログ主は思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

コメント

  1. 週末山紀行 より:

    悩ましい話ですね。
    企業から依頼案件(Finasee)なので、多少盛ったり、尖らせたり、は止むを得ないのでしょうか。FP横山氏も常に葛藤があるのかもしれません。このあたりの背景を考慮するなど読み手側にもリテラシーが求められそうですね。
    その点では良書3冊を読み込んだらネット情報は参考程度が正解かもしれません^^

    • Takereru Takereru より:

      私は、FPさんの担う職責を全うして欲しいという視点でばかりみていました。しかし、確かに依頼案件なら葛藤されているのかもしれませんね。依頼者の意向には背けないでしょうし。そういう視点では見れていなかったので、コメント拝読してはっとしました。鋭いご指摘に感謝です。ありがとうございました!