Business Journal に掲載されていました。こちらも、以前記事にした金融関係の利益相反の一例かと思い紹介します。
記事概要
外部リンク:Business Journal なぜ保険会社はいつも異様に低い補償額提示?交通事故で修理代530万円に半額
たまに目にして、なくなることのない交通事故の交渉ごとの記事です。保険会社の出し渋り、保険会社の定額な提示姿勢に憤慨する被害者と、それを煽る取り巻きはもはや定番といっていいかもしれません。
そんな中で、本記事は比較的中立に概説されているのではないでしょうか。
立場を明確にする
本問題を考えるにあたっての加害者・被害者間の前提の整理は以下のようになります。
・交通事故の物的な損害に関しては、民法上の損害賠償責任の範囲について合意を形成する交渉がなされる。
・当事者は、加害者と被害者。保険会社は、加害者との自動車保険契約に基づいて、当事者である加害者にかわって交渉をしている立場にある。保険会社は、被害者とは逆の加害者側の立場。
・人間が高度な技術下に、集団生活している以上、不可避的に不測の事態は発生する。民法上の損害賠償の建付けは、信賞必罰でも、懲罰的な賠償でもなく、発生した損害の加害者・被害者感での公平な分担とされている。損害が発生した以上、過度に加害者側に負担させるのではなく、公平な分担により社会的なロスを抑え、社会活動を持続させることを趣旨としている。
・賠償金を負担するのは、加害者本人。保険金での支払いは、加害者が、加害者本人の賠償金支払いをカバーするため保険会社と契約している結果にすぎない。あくまでもベースは、民事上の責任であり、保険だからといって、何でも支払われるわけではない。
保険会社が介入しているとはいえ、民事上の賠償責任の話であり、法律の枠内の話です。感情を挟む余地はありません。たたき台として、加害者の側からは、最低限の提示、被害者の側からは最大限の提示をおこない、妥協点を見出していくのは、利害が対立する商取引一般でおこなわれていると思います。
そもそも、保険金の原資は、保険契約者が負担している保険料です。保険契約者の立場からは、公正・公平に適切に保険金を支払ってもらわないと、本来負担する必要のない保険料を負担するという損失が発生してしまいます。保険会社が、保険だからといって自由奔放に支出することは認められないでしょう。税金と同じです。支出の裏には負担が必ず存在します。
加害者、被害者、保険会社の、それぞれ利害関係が異なるがための当然の結果について、感情的になり、一当事者を不当に貶めようとする言動は、非生産的と言わざるを得ません。
仕組みを知る
これは、損害保険の一例に過ぎませんが、利害関係と仕組みを理解する重要性は、当ブログでも何度か取り上げているように、資産運用におけるアクティブ投信や生命保険など金融一般に広く関わります。
税制も同じです。過度に給付することでの人気取りは、誰かの負担になっていますし、減税すれば、税金に依拠している誰かが利益を享受できなくなる利害関係があります。
最近、某県の知事選を巡って、SNSやマスコミ報道のあり方の是非が議論されています。こちらも、分野は異なりますが、金融関係の利益相反や税金の話と根は同じです。
個人的には、断片的な事象から、それぞれの立場を裏付けるかのような事象のみ切り取って、感情的に発信し合う各関係者の言論は目に余るものがあると感じています。憶測や思いだけが先行して、表に出てくる情報のみでは、事実が全く持ってわかりません。
そもそもの地方自治の仕組みそのものや、議会・行政の運営のあり方も忘れ去られている感があります。
いち消費者、有権者の立場からは、感情的な言論に振り回されることなく、客観的な仕組み・制度をまず理解したうえで、明らかな事実をベースに判断することが強く求められる時代であり、そこを意識していかないと身を守れないと強く感じています。
事実と仕組みを理解しないまま、感情的にだけ判断するのは何事も危険でしかありません。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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