23年度も残すところ1ヶ月、あっという間に新制度導入まで1ヶ月を切りました。盛り上がっている今こそ冷静になっておきたいです。
今年の資産運用界隈の盛り上がり
新NISA導入を控えて、動きがあった1年でした。
個人的に印象に残っているのは、全世界型のインデックスの信託報酬価格競争です。三菱UFJのeMAXIS Slimシリーズのオールカントリー、通称オルカンが支持を固める中で、野村の「はじめてのNISA」シリーズの通称ノムカン、日興のTracersシリーズの通称トレカンが、信託報酬0.05775%という従来の最安値のほぼ半額で攻勢をかけたのは驚きました。
これに対して、eMAXIS Slimシリーズが追従して足並みが揃ったと思えば、直前で、楽天がオールカントリーを新規設定し、商品限定で投信ポイントを復活。その後さらに信託報酬0.0561%と業界最低水準へ引き下げへと熾烈を極めました。
信託報酬が下がるところまで下がり、新たに総額1,800万円の生涯非課税枠が設定されるわけですから、運用環境は着実に改善の一途をたどりました。
今年の投資環境
年初からざっくりと比較すると、好調といえそうです。
ドル円レート:130円前後が、150円 これだけで15.4%
日経平均:26,000円前後から、33,000円 同じく12.7%
S&P500指数:3,800から4,500 同じく11.9%
これに対して、肌身で感じる物価高・インフレ。電気やガス、ガソリンは政府から相当程度の補助金が支出されていても現在の水準です。ドル円などつい最近まで1ドル100円ちょっとでしたから、外貨建資産を保有していると、為替だけで見た目50%増しの資産に見えていることとなります。この点は、S&P500や全世界型の株式を保有している方は、慢心しないよう注意が必要です。
新NISAを間近にこれだけの条件が揃っているため、「知ってい人はやっている」「日本人が知らない真実」「断言します。これをやらない人は絶対将来後悔します」などの扇動的な枕詞とともに、
・円安とともに崩壊する日本。貴女を守るのは外貨建資産ということは明白です。
・年2%のインフレ下では、10年で20%預金の価値は減ります。預金だけで資産は守れない時代です。
・新NISAは年金だけではもう生活が成り立たないため国が用意した制度。やらないと出遅れます。政府も貯蓄から投資と断言しています。
・これからの時代は、新NISAの枠をいかに早く埋めるかによって格差が拡大します。
といった類似の言説が巷にあふれています。
本質は変わらない
外部リンク:ヤフーニュース 私の名を騙った投資勧誘詐欺サイトが横行しているようだが、はっきり言う「確実に儲かる有利な投資など存在しない」
確実に儲かる有利な投資など存在しない
私はこれまで、ファイナンス理論の本を何冊も書いた。そこで強調した最も重要なメッセージは、「確実に儲かる有利な投資など存在しない」ということだ。 期待収益率が高い資産は、必ずリスクも高い。つまり、高い収益を得られるかもしれない投資は、同時に損失を被る可能性も大きい。これは、ファイナンス理論の最も基本的な命題である。
出典:私の名を騙った投資勧誘詐欺サイトが横行しているようだが、はっきり言う「確実に儲かる有利な投資など存在しない」
一橋大学や東京大学などで教鞭をとった経済学者 野口悠紀雄氏の重みのある一言です。
ここ数年は好調な株価ですが、数年上がり続けることもあれば、下がり続けることもあります。新NISAは関係しません。また今は円安と言われていますが、円高の可能性もあります。さらに、インフレ率は予想できないです。高度経済成長期の金利をみれば、預貯金が必ずしもインフレに負けるとは言い切れません。S&P500や全世界へのインデックス投資も例外ではありません。
とはいえ、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」といわれるとおり、損失を恐れるばかりもまた一方的すぎるかもしれません。
新NISAを控える今こそ、「確実に儲かる有利な投資など存在しない」という原点を忘れずに、無理せず各自の取りうるリスクの範囲でバランスを保って冷静に資産運用をおこないたいものです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント
新たに総額1,800万円の生涯非課税枠が設定されるんですね。知りませんでした。勉強になりました。
コメントありがとうございます!
こんにちは。
2024年は米国の利下げが始まり円は高め方向でしょうか。
日本は超高齢化と政治もボロボロで明るい未来が見えませんが、
とはいえ、金利差縮小で円高になるのか。
新NISAが始まりますが、ドルコスト均等は分かりつつも、
分かり易い形で円高が予想されるなら、
円が一定程度高くなって資金投下した方がお得かと悩んでしまいます~
同感です。為替は特に変動幅が大きく予想不可能で困りものです。適度に気にするぐらいがいいのかもしれません。