24年6月21日、「経済財政運営と改革の基本方針2024 ~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)が閣議決定されました。昨年度との比較において、FIRE・資産運用に関わる点を確認します。
全体像
内閣府ホームページ:経済財政運営と改革の基本方針2024
全体的には、少子高齢化・デフレ脱却・持続的な社会保障制度・デジタル推進など中長期的な課題については、当然のことながら同じです。
本年度は、本文他にPDFでグラフ付きのまとめ資料が追加されていました。個人的な印象ですが、働ける方は、働けるだけ働いてくださいとのニュアンスが昨年度より、強くなっている印象です。
これまでは、2030年度までに、人口減少に歯止めをかけたいニュアンスでしたが、全体として、もはや揺るぎない確定事項として人口減少が捉えられているように感じました。
で、今回掲載されていた象徴的なグラフがこちらです。この図が2024年度版のすべてと言ってもいいかもしれません。
ご丁寧に日本の76歳は世界の65歳と同様と説明されています。これからは、65歳過ぎても働いてねということでしょう。FIREとは真逆の世界です。65歳定年制でも早すぎるのでしょう。この方向性を前提とすると、税制や年金制度が働いていない高齢者に厳しく改正されそうです。やむを得ないとはいえ厳しい・・・・。
FIRE関連
需要の創出に加え、家計が可処分所得の継続的な増加を通じて成長の恩恵を実感できる
経済財政運営と改革の基本方針2024 P3
よう、構造的な賃上げを社会に広げ定着させるとともに、全世代型社会保障制度を構築し
ていく。
性別や年齢にかかわらず意欲のある人が生涯活躍できる社会を実現するため、全世代
経済財政運営と改革の基本方針2024 P5
型リ・スキリングや若年期からの健康管理を促す全世代型健康診断等のプロアクティ
ブケア、働き方に中立的な社会保障制度の構築
全世代のリ・スキリングを推進する。(中略)地域の産学官のプラットフォームを活用したリ・スキリングの対象に経営者を追加
経済財政運営と改革の基本方針2024 P8
2024年版の特徴としては、2023年度と比較してやたら「全世代型」という言葉が使われていることです。個々の政策は、高齢者の労働参加を促進するよう組み立てられていく点が強調されています。
雇用の流動性を図ることは生き方の幅を広げ、FIREにも親和的ですが、労働力不足で健康的である限り70歳になっても働くことを前提とする社会保障制度となると明らかに逆風になりそうです。
資産運用関連
日本銀行は、本年3月19日、それまでのマイナス金利政策やイールドカーブ・コントロ
経済財政運営と改革の基本方針2024 P2
ール等を変更し、金融政策は新しい段階に入った。安定的な物価上昇率の下での民需主導
の持続的な経済成長の実現に向け、政府は、引き続き、日本銀行と密接に連携し、経済・
物価動向に応じた機動的なマクロ経済政策運営を行っていく。
公的年金については、働き方に中立的な年金制度の構築等を目指して、今夏の財政検証
経済財政運営と改革の基本方針2024 P19
の結果を踏まえ、2024年末までに制度改正についての道筋を付ける。勤労者皆保険の実現
のため(以下略)
資産運用関連は昨年度に引き続き目新しいものはありませんでした。それでも、2023年度版は、新しい資本主義、2,000兆円の家計金融資産を開放、資産倍増計画とキャッチーな言葉が盛り込まれていましたが、2024年度はなくなりました。
日銀の政策変更の明記以外は、NISAやiDeCoの手続き簡略化、iDeCoの拡充(経済財政運営と改革の基本方針2024 P19)など地味な内容にとどまっています。ここは、NISAの拡充や東証のPBR対応などのカバナンス改善促進、スチュワードシップ・コードの継続運用など、既に政策を実行してきたので、当面は大きな動きはないのかもしれません。
後は、本年度末までに公的年金制度改定に道筋を付けると明記されていますのでこちらは内容を追っていく必要があります。
感想
2024年度版は、FIREとか論外で、生涯現役が当然の方向性を明確に打ち出したように思います。「若年期からの健康管理を促す全世代型健康診断等のプロアクティブケア」の行なんか悲壮感さえ漂います。早い期間から資産運用を促すのではなく、早い時期から健康管理して長生きして長く働いてねって・・・・・。
骨太とは程遠いような感が無きにしあらずですが、現状を承知した上で具体的な政策の是非を一人ひとり判断して、選挙権を行使していくほかありません。
最後までお読みいただきありがとうございました。
昨年度版の感想です。
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