個人の資産運用では、分散の観点から、株式と債券の比率を検証することが定番でした。しかし、近年は株式市場の盛況と裏腹に、長年の低金利政策もあり、話題としてあまり目にしません。金利上昇が意識され始めた今だからこそ、現状確認をしておきたいと思います。
eMAXIS Slim 国内債券インデックス
S&P500とオルカンで指示を集め続けているeMAXIS Slim シリーズの国内債券インデックスファンドの直近のパフォーマンスを見てみます。
オルカンとの比較のため、オルカンの設定された2018年10月31日を起点とします。
<eMAXIS Slim 国内債券インデックス>

5年以上の運用で-7.21%と寂しい状況です。政府の金利政策や金利上昇の影響を受けています。
<eMAXIS Slim 全世界株式インデックス(オルカン)>

全世界株式であれば、+177.05% ドル円の為替相場が円安に触れており(2018.10 約113円 2025.1 約155円と、+37%)、為替の影響を除外しても、+140.05%と驚異的なリターンです。
余談ですが、コロナショックの頃は殆ど目立たない資産総額が、徐々に増えはじめ、新NISA元年の2024年、爆発的に規模が大きくなっています。
NOMURA-BPI
これだけパフォーマンスに差があると直近では、あまり注目されないのはやむを得ないですね。
eMAXIS Slim 国内債券インデックスのベンチマークであるNOMURA-BPI(野村ボンド・パフォーマンス・インデックス)は、日本国内で発行された公募固定利付債券の流通市場全体の動向を表す指数で、オルカンのベンチマークと同様に時価総額加重平均型です。

直近は今一歩も、25年以上の長期でみると、債券インデックスらしい動きをしています。
中でも、リーマンショックで株価が大暴落して数年間マイナスリターンが続いた2008年頃にはとてつもないクッション効果を発揮していたことがみてとれます。長期的に見れば、直近僅か数年のパフォーマンスだけで判断することがいかに愚かなことかよくわかります。
直近の債券ファンドの値動をみて
インデックスは万能ではない
こうして比較してみると、同じ時価総額加重平均型インデックスでも、株式と債券では値動きが異なり、さらに、インデックス投資だからといって決して万能ではないことがよくみてとれます。いずれも、数年程度の短期ではどうしようもない期間にあたってしまうことは避けられません。預貯金と同じようなイメージを持ちがちの債券投資ですが、債券投資も株式投資同様に長期投資が原則ということもよくわかります。
逆に近年好調な株式インデックスも短期間では、直近の国内債券インデックスのような値動きをすることは十分想定しておく必要があります。株式は債券よりも高リスクなので、債券の5年以上の運用で-7.21%など可愛らしく思える暴落に直面することも稀ではありません。
人間の常として、直近の高パフォーマーに目を奪われてしまいますが、パフォーマンスが悪く目立たない指標も定期的に追っかけて現状把握し、長期投資という原則に立ち返ったり、短期の低迷の原因を自分なりに考えたりすることは、経済感覚の向上に資すると思います。
儲けたいという感情の制御
直近の株式のパフォーマンスを目の当たりにする範囲では、株式以外の資産クラスで資産を保有するのは、愚かな行為と錯覚してしまいそうです。預貯金や債券ではインフレに負けるとか、機会損失だという主張は、直近の値動きのみで力強い説得力を持ってしまい、株式ファンドに大きくシフトする誘引となってしまいます。
しかしながら、一時的な大損失でも生活に影響しないリスク許容度は、十人十色。運用全般の理解度から、運用期間、定期収入の有無・大小、総資産額、家族構成、月々の生活費などなどバラバラです。
一寸先は闇であり、好調が永遠に続くことも、不調が永遠に続くこともありえません。
個人的には、総資産額を大きくしたい、インフレの影響を回避したいという願望は共通としても、目前の好不調のパフォーマンスに過度に反応しないことが重要で、その意味で最初に資産配分を決めて定期的にリバランスで配分比率を維持する手法は、感情を抑制するうえでも合理的だなとあらためて思いました。
最後まで御覧いただきありがとうございました。
<おまけ>債券クラスでは、債券インデックスファンドの他に物価連動国債ファンドや個人向け国債があります。中でも、個人では個人向け国債変動10は大変強力なツールです。
コメント
シニアに片足を突っ込む昨今、そろそろ債券比率upかと思ってました。
増やすならS&P500やオルカン一択は承知としても、「あえて利益を抑える」という発想も、その分リスク(有事ボラティリティ)が下げる意味で、必要な年ごろと感じています。
トランプさん登場で米国はインフレ再燃が懸念されてますが、これが払しょくされたタイミングがチャンスかもしれません。
コメントありがとうございます!私も同感で使うときの下方リスクを意識するようになってきました。
債券も金利動向など株式同様に難しい面があり、かつ、為替リスクは外国株式で大きく取っているので、債券は個人向け国債変動10をもっぱら重宝しています。