保険料の負担は大きいです。本当に必要か、各人の状況を踏まえて検討が必要です。生命保険について押さえておくべきポイントを紹介します。ブログ主は、大多数の方は、子育て期間など必要な期間だけシンプルな掛け捨ての定期保険で死亡保障をカバーすれば十分ではと考えています。
行動経済学
損失回避性の原則をご存知でしょうか。行動経済学で唱えられているプロスペクト理論(不確実な状況下で意思決定を行う際に、事実と異なる認識の歪みが作用するという意思決定モデルを表した理論)で唱えられているものです。人間が無意識に意思決定を行う際に、利得より損失に対して強く反応してしまい、認識の歪みが発生してしまうというものです。生命保険は、誰しもイメージしやすい死や大病を前提としているため、無意識に過剰に反応してしまいがちです。感情的に判断しないことが重要です。
サンクコスト効果も意識する必要があります。過去の回収不可能なコストを心残りに感じ、より多くのコストをかけようとする心理傾向です。生命保険は何年にもわたり保険料を払い続けます。途中で別のお金の使い道が浮かんでも、過去の支払いに囚われてなかなか解約できないというものです。これは実経験より本当に難しいです。過去保険金支払いを受けるようなことはなかったものの、それは結果論でありその間保障は受けていたわけですから、冷静に判断しましょう。
資産運用と保障は別に考える
終身保険や、養老保険、個人年金、変額保険など運用と保障が一体となった商品があります。これらの商品は、本来別の目的をもった資産運用と、死亡保険などの保障が混在しています。掛け捨てにならないからと何となく安心感があるかもしれません。
しかし、将来への備えは、現在iDeCoや新NISAなど、税制優遇されかつ低コストなインデックス投信が購入できる制度が用意されています。手数料体系も明示されており比較が可能です。
一方で、生命保険については、コストが不明瞭な商品が多い印象です。特に本記事執筆にあたり商品パンフレットを見て回ったのですが、募集人さんや代理店さんの契約手数料については、明示されている商品が見つかりませんでした。その他のコストも低コストなインデックス投信より有利な商品は見つけられませんでした。
途中の解約時の控除も考慮すると生命保険で運用を兼ねるメリットはどうしても見い出せません。
保険の本質は、起こる確率は小さいが、起きてしまったら個人の貯蓄や運用のみではカバーできないリスクを多くの人が少しずつ費用を負担することでカバーするという相互扶助です。
必要な期間だけシンプルな掛け捨ての定期保険で死亡保障をカバーする。貯蓄や運用は別に行う方が合理的ではないかと考えます。
既存の制度を理解する
年金であれば、iDeCo(年金払いは手数料の点からおすすめできない)、個人事業主の方であれば、国民年金基金、国民年金付加保険 という公的制度が利用できます。生命保険のメリットで保険料控除があげられますが、これらの公的制度で社会保険料控除がうけられます。
就労不能リスクについて、会社員の方であれば、病気や怪我で仕事ができなくなった場合、健康保険から、傷病手当を受給することができます。業務中の事故であれば、労災保険でカバーされます。この場合、休業補償があり、さらに死亡・後遺障害の保障もあります。さらに、失業してしまったら雇用保険より、失業給付が受けられます。ただし、制度間の需給調整はありますので注意。
自動車の交通事故であれば、相手からもしくは、自身の任意の自動車保険より治療費実費から後遺障害・死亡の補償を受けられます(人身傷害保険加入の場合)。
健康保険には高額療養費の制度があり、ひと月ごとの医療費の負担額には上限があります。
住宅ローンを組んでいる方であれば、団体信用保険に加入されているケースが大半でしょうから、家計の担い手になにかあっても、住宅は手元に残ることも念頭に置いておく必要があります。
このように公的制度は充実していますし、加入必要な保険でのカバーもあります。
支払保険料と受領できる可能性がある保険金を比較する
医療や収入保障保険を検討する場合は、月々の保険料でなく、加入期間の総支払保険料と、受領できる可能性のある保険金を必ず比較しましょう。
月々これだけの保険料で こんな保障なら検討しようか と思いがちですが、長い加入期間の総支払保険料は結構な額になることが多いです。保険に加入せず保険料相当を貯金すれば、それは全部手元に残ります。それをもしもの場合に充当することもできますし、運用することも自由です。
営業を受けるときは冷静に
販売される方はプロです。応酬話法を用意して、多くの方に営業を行っている経験もお持ちです。もともと損失を感じやすい我々の不安を喚起させるトークはお手の物でしょうし、販売に有利な様々な資料ももっていらっしゃると思います。
また、不安とは逆に、子供が生まれたから保険に入ることは家族への愛情の証などと親心をくすぐってこられるかもしれません。
さらには、お客様を守ることが自分の使命と考えている。こういうお客様がいてあのときおすすめしなかったことを後悔している。あなたにも後悔してほしくないと、使命感を全面に出されるかもしれません。
保険の本質は、確率論に基づく相互扶助です。保険があったから助かった方は必ずいらっしゃいますが、なくても大丈夫なのに漠然とした不安から保険料を払い続けている方もいらっしゃいます。感情論ではなく、売りたい保険が先にあるわけでもありません。あなた自身に何が必要なのか、家計全体をふまえて、あなたの立場に立って、要否を合理的に判断してくれる方なのか見極めも必要です。
請求のことも考える
保険に加入しても、請求できなければ意味をなしません。ここはブログ主のような独身者は要注意です。例えば、ブログ主は若い頃に介護費用保険に加入していますが、これは支払要件が認知症になったり何ヶ月以上の寝たきりの場合に、介護に必要な費用を補償するものです。しかし、そもそも認知症になったら保険のことなど認識不能でしょうし、何ヶ月以上寝たきりになって自分で保険会社へ電話して請求書類を書けるとは到底思えません。配偶者がいたとしても、おそらく同じく高齢で手続きはできるでしょうか。子供がいても、加入内容は承知しているでしょうか。
請求する手段をどのように確保するかは考えておかないと保険加入の意味が全くなくなります。
健康維持
持病がある場合、そもそも審査により加入できなかったり、高額な保険料を負担する必要がでてきます。住宅ローンを切り替える場合、団体信用保険も再審査となるため、ローンの切替が事実上不可能になる可能性があります。不摂生はなるべく避け、定期的な健康診断を受け、病気が見つかったらなるべく早期に対処することが、保険を検討するより重要な事項です。支出見直しにおいて不摂生は最も避けるべきことです。お金より大事ですし、お金の面でも大きなマイナスとなってしまいます。
コメント