マネー現代に掲題の定番記事が掲載されていました。本記事をキックに、特に触れられている、インデックス投資の時間について考えてみます。
記事概要
外部リンク:マネー現代 「S&P500」「オルカン」だけで十分、という人が見落としている「盲点」
ここ最近も何回も取り上げています。結局、書き手が、投信会社の中の方であっても、ライターさんであっても、FPさんであっても、インデックス投資と利害関係が異なれば、こういう似たような内容になるという典型記事です。
今回の記事中では、アクティブ投資のメリット・デメリットは公平に記述されており、その点は、好感は持てます。
一方で、為替リスク・地域の偏重、みんなで資産を失う可能性など、インデックス・アクティブ双方に共通の内容をあたかも、インデックス固有のリスクのように説明され、そこから、インデックス投資の補完、そして、プライベートバンク、IFAへのつながりなど、一定の結論先にありきで、中立ではないようにみえます。
今回は、記事中の「投資を遅く始めた場合の課題:インデックス投資だけでは時間がかかりすぎる」について少し深堀りしてみます。
インデックス投資は時間がかるの是非
実際の数字で見てみます。
単純化するために、
1.運用期間中、元本は不変の架空の投資対象に10年間、計100万円投資することを想定。
2.①利回り5%の投資対象に初年度に一括投資
②利回り5%の投資対象に毎年10万円積立投資
③確率10%で、年率10倍、90%の確率で-50%になる高リスク資産へ毎年10万円積立投資
の3パターンで検証する。
3.それぞれのケースで、A:受領時も元本は変わらない場合 B:運用終了後、受領時に突如暴落に遭遇し、元本が半分になってしまった2つのケースを考えます。
最後に元本半分のケースを入れているのは、ブラックスワン、七面鳥問題を意識してのことです。
以下、この極端に単純化されたモデルケースを例に具体的に考えてみます。
①100万円一括投資、分配金再投資
利回り5%(税金は考慮せず)、分配金を再投資するいわゆる複利効果が認められるケースです。

受領直前の暴落がなければ、5%×10年=50%のリターンで150万のところ、複利効果により、約6万プラスになっています。暴落ケースは、分配金部分も暴落し、トータルマイナスです。5%でも10年なら複利効果はこの程度です。
②年10万円積立投資、分配金再投資せず
次に、一括か積立か永遠に議論される問題とも関連して積立、分配金再投資しないケースを想定しました。このケースでは、市場への資金投下が遅くなる分、分配金も約半分になります。しかし、分配金を再投資していない分、元本下落への耐性もあり、暴落ケースなら一括投資に近い結果とも言えます。
このケースでは一括投資が有利ですが、積立でも、一括と比較して極端に不利にはみえません。

③確率10%で、年率10倍、90%の確率で-50%になる高リスクの資産に毎年10万円、10年間投資した場合
最後に、当たれば大きいが、長期に損失を覚悟する必要があるケースを想定します。かなり攻めた投資のように見えます。確率10%ゆえ、10年に1回、10倍に当たる可能性ある投資です。ギャンブルにも見えますが、ぱっと見て投資対象とされるでしょうか。
投資期間10年間に限定し、確率通り10年に1回当たれば、期待収益率45%で、一見したところ、年率5%の投資と遜色ありません。しかし、リスクは高く、1回限りの投資では-50%で終わってしまう確率は90%と高いです。さらに、期待収益率は不変のため、何十年と繰り返しても、リターンは45%に収束します。

多数の失敗を前提に1つの当たりを模索するベンチャー投資や新薬開発などが、このようなイメージかもしれません。
早い時期に当たればラッキーですが、神はサイコロを振りません・・・・・・。10年続けても全く報われないこともあれば、当たりが2年続くなどレアケースに遭遇する確率も0ではありません。
それでも、10年限定なら、確率的に考えると、堅実な5%利回りの投資と似たような運用結果が見込まれます。
ブログ主見解
例1と2をみると、10年ぐらいの短期間では、一括か積立か問題や、複利の効果はイメージされるほど大きくないとも言えます。実際には、例にはない株価の変動で結論は様々になります。また、元本変動しない極端な例であることを割り引いても、例3のような例を見ると、インデックスだから速度不足とは言いえないと思います。
「インデックス投資ではリターンの速度が不足」ではなく、短期に大幅な収益を得られた成功例も含めた平均的なリターンがインデックスなわけですから、株式投資でリターンを得られる可能性はよくインデックスの程度と承知しておいたほうが無難と思われます。
それに輪をかけて、時間や複利という言葉にとらわれて、高リターンの代償として高いリスクを取りに行き報われるか否かに賭けることの意味は、よくよく考える必要がありそうです。そのような手段があるとすればその手段により、インデックスのリターンそのものがすでに底上げされています。当然のことながら、成功の裏には失敗もあります。
例3のような高リスクを受け入れると、短期間では、全く報われない可能性も大幅に高まっていることが目に見えてわかると思います。
結局、魔法は存在しないわけで、インデックスを越えようとすれば、インデックスを下回る可能性も高まります。そもそも株式であれば、インデックスですら相当のリスクを抱えています。年齢、時間や複利という言葉に焦る必要はなく、個人のリスクの取れる範囲で淡々と投資して、結果は運に任せる。失敗も想定しておくぐらいに力を抜いて考えておくしかないです。所詮人間の生きる時間軸では、不確定要素はどうやっても個人では排除できないです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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