ネット記事で触れられていた、eMAXIS Slim全世界株式投信と上場版eMAXIS Slim全世界株式のETFの騰落率の差に驚き確認してみました。「騰落率を見ると、全ての期間においてeMAXIS Slim全世界株式の方が勝っています」って本当???
記事概要
外部リンク:MONEY PLUS 【新NISA】オルカン以外の選択肢は何がある? 成長投資枠の使い道
内容そのものは、極一般的なものです。ざっくりまとめると、「成長投資枠も、オルカン一本で問題ないけど、ETFや日本株のインデックスの選択肢は否定しません。自己責任で」というもので、ブログ主も全く持ってそのとおりだと思います。
驚いたのは、内容ではなく、記事中で触れられていたMAXIS全世界株式ETF(2559)とeMAXIS Slim全世界株式の騰落率の差です。
では、MAXIS全世界株式上場投信とeMAXIS Slim全世界株式の月次レポートを比較してみましょう。
投資対象となる国は、eMAXIS Slim全世界株式とほぼ一緒で、比率もほぼ同じです。また組み入れされている上位10銘柄も同じですし、投資銘柄数も同じです。これは同じ指数に連動するインデックスファンドなので、上場していてもいなくても同じになるのはあたり前といえます。
しかし、騰落率を見ると、全ての期間においてeMAXIS Slim全世界株式の方が勝っています。2023年12月29日現在のレポートで過去1年の騰落率は、eMAXIS Slim全世界株式が30.4%なのに対MAXIS全世界株式上場投信は27.9%、過去3年で見るとeMAXIS Slim全世界株式が63.4%なのに対し、MAXIS全世界株式上場投信は55.7%です。
出典:MONEY PLUS 【新NISA】オルカン以外の選択肢は何がある? 成長投資枠の使い道
記事によると、3年で何と、7.7%も差があります。そんな馬鹿なです。両者の差は、ETFか投信の違いと分配実績の有無だけで、マザーファンドも同一のはず。記事では、信託報酬の差が原因ではと推測していますが、わずか0.0数%の差がたった3年でこんなになることはあり得ません。とんでもない嘘記事だと調べることに。
確認してみると本当だった
記事にある2023年12月29日現在のレポート(月報)を確認してみると、本当でした。記事に引用されている数値は正しかった・・・・・。
<eMAXIS Slim全世界株式>
<MAXIS全世界株式ETF(2559)>
原因は分配金の有無
これには驚きとともに、直感的に、差異の原因は、MAXIS全世界株式ETF(2559)の騰落率データは、分配金が反映されていないからと思いました。案の定、その通り月次レポートに記載がありました。
そこで、裏付けのため、さらに念を押して2559の設定日2020年1月8日と2023年12月29日の分配金再投資した基準値とSlim全世界株式を比較してみます。
同社のサイトには、設定来の基準価格がすべて公開されていて、MAXIS全世界株式ETF(2559)のデータには、分配金再投資の基準価格も掲載されていますので、こちらを用いました。
2020年1月8日基準価格 | 2023年12月29日基準価格 | 騰落率 | |
MAXIS全世界株式ETF(2559)分配金再投資 | 9926 | 17882 | 80.15% |
eMAXIS Slim全世界株式 | 11539 | 20899 | 81.11% |
(参考)MAXIS全世界株式ETF(2559)+分配金現金のまま | 9926 | 16929+755*=17684 | 78.15% |
*税引前
同じ土俵で比較すると、約4年間で差は、わずか約1%です。2559の分配率が年1.3%ぐらいと仮定すると、特定口座では、年間約20%の税金で4年トータルでは、1.3%☓0.2☓4年=1.04%相当がキャッシュアウトされます。とすれば、税金分以外は、やはり全く同一の運用とみて間違いなさそうです。NISA枠で再投資で運用すれば、再投資の税金がかからないため、当たり前ですが、両者はほぼ同じでしょう(厳密には、分配金の額による全額再投資の可否やNISA枠などから一致はしません)。
信託報酬が近似で、投資対象もマザーファンドも同じであれば、こうなりますよね。安心しました。
結局、記事では、分配金を全く考慮せず単純に両者の騰落率を比較して、常に「投資信託が勝っている」と結論付けている点が問題ということになります。これは説明不足は否めません。著者もなにかおかしいと思った節は原因を推測する記事内容から読み取れます。ただ、おかしいと思ったら、記事にする前に原因を確認すべきではないかと。
この記事だけ見てMAXIS全世界株式ETF(2559)駄目じゃんと誤解する方が出ないことを祈るばかりです。
後、余談ですが、全世界株こうしてあらためて見てもすごい騰落率です。年単純換算で20%は出来すぎです。円安の影響も大きいです。続いて欲しいのはやまやまですが、こんなことが続くとは思えません。今後の何らかの調整は、意識しておいたほうが精神衛生上、よさそうです。
鵜呑みは厳禁
記事を書かれた方は、単純に分配金を見落とされているだけと思いますが、それでも、誰かの事実誤認の原因になるかもしれない点は、注意が必要です。肩書と記事の正確性は関係ありません。さらに、残念なことに、世の中には、特定の目的のため意図的に操作されている言動も溢れています。何かの情報をもとに行動する場合は、本当に注意が必要です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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