新NISAが利用可能になり、活用方法の記事を目にする機会が大きなっています。株主優待とともに定番の高配当投資は新NISAに親和性があるか考えてみます。
週刊現代の記事
外部リンク:週間現代 「オルカン」一択は本当か?配当金や分配金が欲しい人や大儲けしたい人は「新NISA」をどう使えばいいのか【中級編】
複数のFPさんが様々な疑問に一問一答形式で回答する内容になっています。続きの、「上級編」含めて八方美人的ではあるものの、当たり障りのない万人向けの内容だと思います。
ブログ主が気になったのは、Q17「配当金・分配金が欲しい」のところです。
さきほど、『オルカン』一択と言いましたが、それだけでは投資として面白くないのも事実。さらに非課税の恩恵も、遠い将来に換金するまで受けられません。
そこで成長投資枠で、高配当株を買うのもいいでしょう。
出典:「オルカン」一択は本当か?配当金や分配金が欲しい人や大儲けしたい人は「新NISA」をどう使えばいいのか【中級編】
NISAの非課税口座では、配当金・分配金を主目的とした株式投資のデメリットの1つである配当・分配の都度の課税が発生しないという絶大なメリットを無期限で享受できるからです。
高配当投資といえばシーゲル教授
高配当投資のバイブルといえば、投資界の「赤本」と呼ばれるこちらです。
ブログ主も、初めて株式を購入した後に読んで、現在も手元に置いています。玉石混交の株式投資における羅針盤として長年読み継がれている名著で、ご存じの方も多いと思います。多彩な角度から株式投資を分析されており、知的好奇心を刺激され、大変勉強になります。
一般論として、高配当株企業に投資するメリットは、ブログ主の頭の中の整理では、以下の通り、投資先企業のガバナンスに資するからと理解しています。
・配当という形で株主に現金を配布するためには、企業の手元に現金が必要であり、帳簿改ざんによる粉飾決算などの不正行為の予防になる。
・同じく、高配当を維持するためには、安定した収益を上げ続けることが必要であり、それを継続しているということは、企業のカバナンスがしっかりしている。
・経営者が、無駄な事業に投資して利益を吹き飛ばすリスクを軽減する。
一方で、高配当企業はメリットの裏腹で、
・成熟企業が多く、成長性が乏しく新規投資先がないため、配当として株主に還元している。配当しないと投資先の魅力として乏しく、株価が維持されない。
・単に株価が下がっているから高配当になっているだけで、将来的な減配のリスクが高いことがある。
などがあげられます。結局、配当政策は企業ごとまちまちであり、そのときどきの経済情勢に左右されるため、ブログ主は、高配当株投資には中立的でこだわりはないです。
新NISAとの親和性
あくまでも、個人的見解ですが、
個別株
配当金が保有する限り無期限で非課税で、毎年非課税メリットを受けられるのは大変魅力です。
ただ、一方で、無期限に株価を維持し続け、かつ高配当でもあり続けられる企業を探せるかが問題です。
株価も配当も右肩上がりのスーパー企業なら人気が殺到して、すぐに平均に落ち着きそうです。そのような企業を事前に見つけるのも至難です。
仮に銘柄選択の能力があったとしても、年間投資枠が成長投資枠で最大年間240万円の縛りがあります。投資先の評価が低下し、銘柄入れ替えしようにも、年間枠の利用状況により、NISA口座内では、すぐ銘柄入れ替えできない場合があり、ハードルが上がります。枠を埋めようとしても、最低でも5年の月日を要するのは長いです。
こちらに、リンクを載せていますが、2011年頃は時価総額世界一は、高配当株のExxonMobilでした。GAFAM全盛の今から見るとちょっと信じられないですよね。それが、爆損モービルと揶揄され、また復活したり・・・。時代とともに主力企業は入れ替わっています。
投資信託・ETF
指数連動型であれば、銘柄選択の難問はクリアされます。ETFでは、分配がなされますが、無分配型投資信託では、NISAの枠を消費することなく、分配金相当の再投資が可能です。出資単位も小さく、使い勝手もいいです。
そうすると、高配当投資は、オルカンなど広く分散された時価加重平均の伝統的なインデックスよりも、好成績を残せる可能性が高いな否かが、残る検討問題となります。
個人的には、明らかに有利な投資手法があったら、瞬く間に普及してバランスが取れるところに収斂していくはずなので、高配当だから優れているとは言い難いと理解しています。仮に高配当投資が有利であり続ければ、インデックス中の高配当銘柄の比率が高まるだけです。
将来を保証するものではないものの、効率的と言われる米国ETFの利用できる過去データを確認しても、日本でも比較的知名度があるHDV,SPYD,VYMといった高配当ETFは、トータルリターンでVOOやVTIといった時価加重平均型のインデックスに劣後しています。
よって、新NISAであえて高配当に拘る必要はないと思います。
NISAの制度設計
心理面だけ考えると、一定間隔で現金配当・分配がなされ、無期限に非課税だと、将来を待たず今すぐに投資をしている実感とNISAの活用が両方味わえ、大変魅力的にうつります。目先の高配当はうれしいです。
しかし、結局再投資するなら、NISAの枠を消費してしまうため、配当・分配されるだけ不利です。遠い将来の資産最大化が目的なら、目先の配当は無用の長物です。
一方、ありがたく成果として使ってしまう前提であっても、オルカンなど広く分散された時価加重平均の伝統的なインデックスを必要なときに必要なだけ解約したほうが、非課税枠を最大限利用でき、効率的です。証券会社によっては、定額・定率の自動解約サービスも利用できます。おまけに、こちらだと、解約した分の元本相当は、翌年以降NISAの枠も回復します。
以上により、気持ちの問題ではなく、非課税枠を最大限に活用して運用益を得る可能性を高めるという合理的な観点からは、やはりオルカンなどの広く分散された時価加重平均の伝統的なインデックスへの投資はベターな選択肢と思われます。
余談になりますが、記事でもふれられているように「インデックスだけではおもしろくない」と言われます。しかし、オルカンであれば、投資信託を通じて世界中の名だたる企業の株主となっているわけで、全世界の政治・経済と自分の資産が一蓮托生の関係となっています。十分面白いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント
> しかし、結局再投資するなら、NISAの枠を消費してしまうため、配当・分配されるだ> け不利です。遠い将来の資産最大化が目的なら、目先の配当は無用の長物です。
投稿ありがとうございました。心理的には配当は嬉しいですが、、、ですね。
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コメントありがとうございます!
本当にそうですよね。配当は投資の成果を得たという喜びがあるのに、長期的にはあまり得になっていないという・・・。
この、本能というか直感に反する事象は困りものです。つくづく人間は感情的な生き物と痛感します。