三菱UFJ国際投信が、野村アセットのはじめてのNISAに対抗してeMAXIS Slim全世界株の信託報酬を発表しました。そこで、各商品と各社の投信保有ポイントと上場投信である2559の貸株と比較して証券会社ごとの実質コストを確認してみます。
最低コスト全世界株式投資
今回の改定で、税込み信託報酬最低水準0.05775%に、eMAXIS Slim 全世界株式(三菱UFJ国際・通称オルカン)、Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス(日興・通称トレカン)、はじめてのNISA・全世界株式インデックス(野村・通称ノムカン)が揃いました。
記事作成現在、販売は、Tracers MSCIオール・カントリーは、SBI証券のみ。はじめてのNISA・全世界株式インデックスは、SBI証券・カブドットコム証券のみと限定されています。
これらの超低コスト投信の信託報酬は、上場投信であるMAXIS全世界株2559 の信託報酬0.0858%よりも、低いです。隠れコストも含めた実質コストはいずれも実績がないため、およその推定値を用います。証券会社によって、どれぐらいコスト差が生じるか気になったため一覧化してみます。
各社投信保有ポイントと2559貸株
楽天証券は、投信保有ポイントが改悪されており比べるまでもないため未掲載です。隠れコストは推定値で、投信ポイントは、公表前のため、ブログ主の独断予想によっています。実際とは異なるため、あくまでもイメージを掴む参考としてください。
SBI・トレカン | SBI・ノムカン | カブコム・ノムカン | SBI・SLIM | カブコム・SLIM | マネックス・SLIM | 2559 | (参考)VT | |
信託報酬 | 0.05775% | 0.05775% | 0.05775% | 0.05775% | 0.05775% | 0.05775% | 0.0858% | |
推定実質コスト*1 | 0.08775%*2 | 0.11775% | 0.11775% | 0.11775% | 0.11775% | 0.11775% | 0.1558% | 0.07% |
投信保有ポイント | 0.0175% | 0.0175% | 0.005% | 現在0.0415% 予想*3 0.0175% | 0.005% | 現在 0.03% 予想*4 0% | – | |
貸株金利 | – | – | – | – | – | – | 0.1%*6 | |
100万円保有のコスト*5 | 700円 | 1,003円 | 1,128円 | 1,003円 | 1,128円 | 1,178円 | 558円 | 700円 |
500万円保有のコスト*5 | 3,500円 | 5,015円 | 5,640円 | 5,015円 | 5,640円 | 5,890円 | 2,790円 | 3,500円 |
1,000万円保有のコスト*5 | 7,000円 | 10,030円 | 11,280円 | 10,030円 | 11,280円 | 11,780円 | 5,580円 | 7,000円 |
*1 改定前のSLIMの隠れコストは、約0.06%と推定し、作成。2559は、上場コストがあり、約0.07%と推定した。概算値ゆえあくまでも参考程度に。
*2 2023年8月3日 日興アセットより信託報酬以外の経費は、0.03%が上限と改定アナウンスがなされたため、信託報酬+0.03%ととした。
*3 tracers MSCIオール・カントリー、はじめてのNISAと同水準になると予想。
*4 信託報酬率が0.1%未満の投資信託は0%に指定されていることが多いため。マネックスはカード積立ての還元率が高いため、0%でも対抗できるとふんで0%とすると予想。
2023.9.19追記予想通り、23.9.8改定で0%へ改定となりました。
*5 実質コストから、投信保有ポイント、貸株料を控除した額を掲載。
*6 貸株金利は、2023年8月18日時点のSBI証券、楽天証券、カブドットコム証券を参照した。
まとめ
eMAXIS Slim 全世界株式が業界最低水準のコストを目指すの宣言通り、今回追従してくれたのはありがたい限りです。長期投資する上で、ずっと保有できる安心感はこの上ないです。一方、当初ベンチマークの利用料金を信託報酬に含めず、不評を買ったTracers MSCIオール・カントリーは、その他コストの上限を明示することで挽回を測ってきました。アナウンス通りとすると、ベンチマークが異なるヴァンガード社の米国ETF VTと比較しても遜色ない水準ゆえ、コスト競争はそろそろ限界と思われます。
信託報酬の低下に伴い各社の投信ポイントも引き下げが予想され、証券会社間の投信ポイントの差もほぼ縮まってくると思われます。どこか一社となるとSBI一択ですが、低コストインデックスファンドを保有することに限定すれば、どこの証券会社でも大差はなくなりそうです。
一方、上場投資信託との関係はどうでしょうか。
現状でも、上場投信であるMAXIS全世界株2559 は貸株料を加味すると、コストは最低水準です。特定口座を前提にすると、分配金受領時にファンドで外国税額控除を適用してくれるため、二重課税も回避できます。ただ、デメリットとしてETFの仕組み上必ず分配金が出されることで、税の繰り延べ効果を得られない点があります。さらに、貸株を利用すると分配金相当と貸株料が雑所得となり、確定申告を要する点があります。また、そもそもNISA口座では、国内非課税となるため、外国税額控除が適用されませんし、貸株も利用できません。分配金を再投資するとNISAの枠を消費してしまいます。
以前、特定口座で、検証した際にも、MAXIS全世界株2559 は、15年程度の運用では、二重課税を回避できない信託報酬改定前のeMAXIS Slim 全世界株式のとほぼ同じ結果になっていました。
今回の改定を踏まえると、特定口座でもNISA口座でも、2559を利用するメリットはあまりなく、新NISAで、純資産も1兆円超えの安定感あるeMAXIS Slim全世界株を、保有できるだけ保有し、さらに余力があったら、特定口座でもeMAXIS Slim全世界株を保有すればいいのではないかとブログ主は思いました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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