5月26日付で、JPX総研より新指数「JPXプライム150指数」の構成銘柄及び算出要領が公表されました。内容は押さえておきたいと思います。また、2014年より算出されている旧来の類似指数であるJPX日経400指数と比較してみます。
JPXプライム150
外部リンク:価値創造に着目した新指数「JPXプライム150指数」の骨子について(2023年3月31日JPXよりのお知らせ)
2023年3月に骨子が公表されていた新指数です。伝統的な時価総額加重方式とは異なる定量的なルールを策定して機械的に投資銘柄を選定するスマートベータに属する指数です。
詳細は、概要にまとめましたが、東証上場の時価上位500社から、ROEが高い上位75社とそれ以外で、PBRが高い上位75社で構成され、定期入れ替えがなされます。
上記リンク先に、バックテスト結果が公表されています。短期では、東証に上場する全企業の時価加重平均指数のTOPIXとほぼ同じ値動きとなっていますが、長期になれば若干上回っています。
JPXプライム150とJPX日経400の違い
いずれも、効率的な資本の活用に着目したスマートベータ指数です。プライム150は、母集団が時価総額上位500社から150社を選定。日経400は、全東証上場会社から400社を選定するため、プライム150の方がより時価総額が大きい会社で構成されます。
選定方法は異なりますが、両者はあらかた同様の値動きをしていくと予想されます。
下記のチャートは、TOPIXに連動するETF1348(黄色)と、日経400に連動するETF1593(青色)の5年間の比較です。JPXプライム150のバックテストと同様に、TOPIXとほぼ同じ値動きとなっていますが、長期になれば若干上回っています。
ちなみに、これらのETFは信託報酬がとても低く、いずれも、わずか0.0858%です。
推測:JPXプライム150の導入の狙い
ほぼ同じようなJPX日経400が存在し、既に10年も実績があるのにもかかわらず、新指数を導入するのは、選定基準に「PBR1倍」以上を入れたかったからではないでしょうか。
最近下記リンクのような記事を読まれた方も多いかと思います。金融庁、日本証券取引所ともに、かねてより、日本企業が効率的に資金を活用していない、株主との対話が少ない点の改善を求めていますが、最近になってPBR1倍を特に強調している印象を受けます。
比較的わかりやすい指標を強調することで、企業統治の改善を促す一連の政策の一環で、今回JPXトピックス150を新設したと推測されます。
外部リンク:東証の市場改革「PBR1倍割れ企業」の注目ポイント(マネックス証券マネクリ)
投資対象として魅力的か
スマートベータは、伝統的な時価総額加重平均型インデックス運用とアクティブ運用の中間に位置するとされています。
両者のいいとこ取りにもみえますが、あらゆる要素は、時価総額加重平均型インデックス運用に収斂されると考えますので、長期的には、TOPIXを上回ることは困難かと思います。
また、日本株式に偏重するのも、日本株式を外すことも、両極端です。全世界の株式の時価加重平均型のインデックス投資であれば、日本が衰退しても、他国をアウトパフォームしても全世界の中で調整されます。よって、自国とはいえ、一国のスマートベータに傾倒する必要はないと思います。
ただし、既に存在するJPX日経400に連動する投資信託やETFは信託報酬がTOPIX連動型と同じぐらい安い商品が存在します。現在JPXプライム150はライセンス申し込み期間中で、今後、同指数に連動する投資信託も発売されると思います。もしかするとサプライズもあるかもしれず、頭の片隅にはおいておいていと思います。
ちなみにブログ主は、個別株との比較のため、日経平均とTOPIX,JPX日経400の指数連動のETFを、同じような価格の時に1単位だけ購入して、個別株がインデックスに負けていないか、定点観測しています。これらは、購入時期が2014,2016と異なりますが、似たような指数でも意外とばらつきます。また、アメリカ株全盛期ですが、日本株もなかなか健闘していると思います。
最後に、以下に、新設のJPXプライム150と従来からのJPX日経400の概要をご参考に記載します。興味ある方は、リンク先の日本証券取引所の元情報をご参照ください。
(ご参考)JPXプライム150とJPX日経400の概要
JPXプライム150
外部リンク:JPXお知らせ「JPXプライム150指数」の構成銘柄及び算出要領の公表について
JPXプライム150指数開発のねらい
昨今、日本企業の価値創造の実態について注目が高まっていますが、例えば、東証プライム市場においては将来の価値創造の期待を表すPBR(株価純資産倍率)が1倍を超えている上場企業は約半数に留まっている状況であり、株主資本コストや株価を意識した経営の実現が求められています。
(中略)JPX総研は、「JPXプライム150指数」により価値創造が推定される我が国を代表する企業を見える化し、本指数やその構成銘柄が国内外の機関投資家や個人投資家の中長期投資の対象となることを通じて、価値創造経営の浸透、日本株市場の魅力向上に寄与することを目指します。
JPXお知らせ「JPXプライム150指数」の構成銘柄及び算出要領の公表より抜粋
JPXプライム150指数の指数算出方法
以下の基準です。東証上場企業時価上位500社からROE*1 8%以上の上位75社を選定する。次に75社に含まれない対象群から、PBR*2 1倍以上の上位75社を選定し、合計150社で構成する。この150社を浮動株時価総額比例にして指数算出するものです。
*1 Return On Equity(自己資本利益率)。株主の出資金でどれだけ稼いでいるかを表す比率。株主資本にもコストが発生するため、8%程度はないと真に稼いでいるとは言えない状況。
*2 Price Book-value Ratio(株価純資産倍率)。理論上は、1倍未満であれば、株価が会社の解散価値を下回る。すなわち、事業継続するより、解散して残余財産を分配したほうが株主は儲かってしまうこととなる状態にある。
【時価総額によるスクリーニング】
母集団のうち、基準日における上場時価総額上位500銘柄を「適格銘柄」とする。【資本収益性(エクイティ・スプレッド基準)による銘柄選定】
▶適格銘柄、かつ、当期及び一期前の推定エクイティ・スプレッドが正の値の銘柄(ROEが8%を超える銘柄に限る。以下「エクイティ・スプレッド基準適格銘柄」という。)を抽出する。
▶エクイティ・スプレッド基準適格銘柄のうち、当期の推定エクイティ・スプレッドの上位75銘柄を構成銘柄として選定する。【市場評価(PBR基準)による銘柄選定】
JPXお知らせ「JPXプライム150指数」の構成銘柄及び算出要領の公表より抜粋
▶エクイティ・スプレッド基準により選定された銘柄を除き、適格銘柄、かつ、当期のPBR及び二期(当期・一期前)のPBRの平均値がいずれも1倍を超える銘柄(以下「PBR基準適格銘柄」という。)を抽出する。
▶PBR基準適格銘柄のうち、上場時価総額上位75銘柄を構成銘柄として選定する。
JPX日経400
外部リンク:JPX日経400
2014年度に、似たようなコンセプトの指数が既に策定されています。
JPX日経400の狙い
資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとって投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数を創生します。これにより、日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な企業価値向上を促し、株式市場の活性化を図ります。
日本証券取引所JPX日経400概要ページより抜粋
JPX日経400指数の指数算出方法
東証の全銘柄から、直近3年の赤字企業を除き、 売買代金と時価総額を勘案し1,000社を選定。3年間のROE(40%)営業利益(40%)時価総額(20%)でスコアリングして、さらに少しだけ定性情報を加味して400社を選定。浮動株の時価総額比例にして指数算出するものです。
【選定基準】
以下の手順及び基準に従い、銘柄選定を行います。日本証券取引所JPX日経400概要ページより抜粋
- スクリーニング
① 適格基準によるスクリーニング
下記のいずれかに該当する場合は銘柄選定の対象としない。
・上場後3年未満(テクニカル上場を除く)
・過去3期いずれかの期で債務超過
・過去3期すべての期で営業赤字
・過去3期すべての期で最終赤字
・整理銘柄等に該当
② 市場流動性指標によるスクリーニング
上記を除く全対象銘柄の中から、以下の2項目を勘案し、上位1000銘柄を選定。
・直近3年間の売買代金
・選定基準日時点における時価総額- 定量的な指標によるスコアリング
(1)により選定した1000銘柄に対して、以下の各3項目にかかる順位に応じたスコアを付与します(1位:1000点~1000位:1点)。その後、各3項目のウェイトを加味した合計点によって総合スコア付けを行います。(ROEと営業利益はスコア付けに際しての取扱いあり)
・3年平均ROE:40%
・3年累積営業利益:40%
・選定基準日時点における時価総額:20%- 定性的な要素による加点
(2)のスコア付けの後、以下の各項目を勘案してスコアの加点を行います。
この加点は、(2)の定量的な指標によるスコアリングに対する補完的な位置づけです※。
・独立した社外取締役の選任(取締役の総数の過半数選任)
・女性役員の選任
・IFRS採用または採用を決定。
・決算情報・「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に係る英文資料のTDnet(英文資料配信サービス)を通じた開示
※(2)の総合スコアのみによって選定を行った場合との差異が最大でも10銘柄程度となるような加点規模です。
コメント